優秀な調査員の無駄遣い
ほとんどの SIU が本質的に受け身になっています。調査員は、ニュース、リファラル、全米医療保険詐欺防止調査協会(NHCAA)の傾向や司法省に関する大型報道記事の収集に時間をかけ、データを分析して、不正のエクスポージャーがないかどうかを確認しています。それは優れた法執行機関が行う業務の性質です。調査員がある人物から疑わしい情報を教えてもらったり、調査員本人がたまたま気付くことがあって、調査を始めるのです。しかし、言うは易く行うは難しです。
不正検知で大きな成果を上げている SIU は、保有する高度なツールと広範なリソースを使用して、プロアクティブで頑強な調査を行っています。しかし、残念ながら、すべての SIU チームがベストな詐取、無駄、悪用の検知防止ツールを持っているわけではなく、徹底的な調査を行うスタッフが不足していますし、ましてや新たに発生している複雑な不正ケースを常に把握しているわけではありません。
調査員として、担当しているケースについて、本当に時間を最大限に活用していると言えるでしょうか? SIU のリーダーとして、小規模ケースの担当や大規模ケースの調査に時間と労力を無駄にせず、大きな影響力と高い効率性を有するようにチームを運営していると言えるでしょうか?
最優秀とされる SIU であっても、いまだに Excel を使用しています。いまだに基本的なピボットテーブルを実行して集計したり、外れ値の動作を確認しています。通常、高額請求治療コード、高額請求診断コード、サービス日などのキーフィールドを探すために実行するさまざまなピボットテーブルのパターンがあります。
ケースの成熟度、医療保険の規模とインフラによっては、ケースのオープンに数週間かかる場合があります。保険によっては、調査が JIRA リクエストのように処理されているところがあります。要求しているデータパラメーターを含むチケットや電子メールを送信して、順番に処理されるのを待つだけです。最初のリクエストから数週間経過しても、SIU 部門が必要なインサイトを得ていないこともあります。
このプロバイダーやケースのオープンの要否について調査を行ってできる限りの材料を探すために、調査員が非常に長期間にわたってこうした選別に苦しむことになることがあまりにも多いのです。ケースのオープンの要否についての判断に時間がかかりすぎ、経験の浅い調査員の場合、遭遇するいくつかのスキームに対して十分な準備ができていない可能性があるため、選別作業に多くの時間と調査の手間がかかります。データ分析や社内リクエストの作成に時間を無駄にしています。調査員の中にはデータを管理できない者もいますが、ケースのエスカレーションに役立つそれ以外の情報のすべてが必要です。そうした部門の監督者、ディレクター、SIU マネージャーの方は、部下がケースを調査するのに時間がかかることや、部下個人やユニットのそれぞれのパフォーマンスに影響していくことを認識する必要があります。調査員が一つの手がかりを得てから 4 か月間経っても正式にケースをオープンしていないとしたら、一体何が起こっているのでしょうか?
無駄なケース
この点で、ケース管理が重要になってきます。なぜなら、現在進行中のアラートと調査について追跡と報告ができなければならないからです。手がかりが十分に成熟したり、上司からの内部承認や、ネットワーク管理などの医療保険内の他の部門からの内部承認が得られれば、正式にケースに移せます。多くの医療保険には、ケースをオープンできる所定期間などのケース関連の期限に関するかなり厳しいガイドラインや、忠実に遵守するべきガイドラインがあります。
医療保険では部門間で広範な連携が行われているため、不正検知に携わるSIU は請求に関するすべての事項を追跡できる単一リソースが実際に必要になります。たとえば、ネットワーク管理チームに対してプロバイダー関連の契約を要求した場合は、それをケースファイルに加える必要があります。かなりの不正であると判明し、すべての事項を法執行機関に通報する必要がある場合、おそらく法執行機関は、調査員によるケースの資料の提出を要求してくるでしょう。これには、ケースの時系列、添付ファイル、すべてのケース資料や、ケース関連のメモが含まれるでしょう。調査員は、手元にあるものを提出します。弁護士が刑事手続を進める場合に、ぎりぎりになって、整理されていない手抜きのケース資料を提出することには多くのリスクが伴います。証拠開示プロセスで低品質の情報であることが表面化するようでは、弁護士でもコストを回収できません。
Excel は、財務用の計算表で使用するために作成されたものであって、テキストを大量に使用するタイプの分析用には作られていないことは明らかです。したがって、ケースの資料や活動の追跡や更新においていまでも Excel を使用している SIU にとって、それは煩雑で非常に嫌な作業になるでしょう。
医療保険は不正検知の対策に対して多額の資金を投資していますが、不一致や、手続き上の欠陥、調査の可視性の欠如などの理由によって、勝つと考えていたケースや、資金の一部を取り戻せると考えていたケースであっても、負けてしまうことがあります。実際にも、その後において、医療プロバイダーがハラスメントなどで反訴してきたり、当該保険の患者に対する治療再開を拒否してくることがあります。
監査とコンプライアンスの準備時間の無駄
私のような調査員は、一般に認められている一定の監査基準を遵守していますが、そうした基準の多くは、文書化、つまり、明確で簡潔かつ正確な情報による文書化に関するものです。監査で失敗した事態を収拾したり、監査の準備で慌ててストレスを感じたりするだけでも、整理されたケース管理が重要であることを強調するのに十分です。
CMS などの規制監査であれば、こうした整理によって、医療保険が詐取、無駄、悪用の防止のための基準を満たしていることが確認できます。たとえば、監査では、すべての過去のケースについてリストとレポートの提出が要請され、そのうえでケースがランダムに選択されます。こうして選定されたケースについて、SIU は、各ケースに関するすべての事項について最適なレポートとドキュメントを用意し、すべてのドキュメントを 1 つのシンプルなパッケージにしてエクスポートと提出ができる必要があります。
医療保険がいずれかの監査に合格しなかった場合、さまざまなレベルでの罰則が課せられます。医療保険は、SIU がコンプライアンス基準を改めて遵守できるようにするために是正措置計画を時間をかけて制定したり、MCO 用の資金を失ったり、判明した事態の重大さによっては CMS が医療保険に罰金を科したりする可能性があります。
ケース管理で無駄をなくす
SIU が Excel やルール ベースで詐取、無駄、悪用の検出を用いる場合と、高度な AI によるケース管理を行う場合との違いは数え切れないほどあります。何よりもまず、これはワークフローの認定となり、機械学習のフィードバック ループのように機能するだけでなく、調査の時間枠を追跡するのにも役立ちます。手がかりが最初に調査され、その後ケースとして転送されると、ワークフロー認定プロセス全体を対象とするデシジョン ツリーによって、ケースは承認、コミュニケーション、フォロー アップのレベルに順に進みます。チーム メンバーに対するリマインダー送信を設定してケースのフォロー アップやデータの再確認を求めたり、その時点で十分なデータがない場合は、適切な上のレベルに引き上げます。
また、アクティビティ タイムラインには、適切なケース管理ツールも付属しています。アラートが発生しているケースへの対応内容や、クエリの実行時、データの更新時や変更時などについて、追跡してその時点におけるメモを文書化できます。シフトの「統合ケース管理 (Integrated Case Management)」では、ログイン実行者、ケースに触れた者、更新理由を示す監査証跡にアクセスできます。すべてのメモが記録され、そうしたメモを通じてドキュメントを追跡したり、追加の添付ファイルをアップロードしたりできるため、アクティビティのタイムラインが非常に重要になります。ネットワーク管理から契約書を受け取り、その契約書を読めば、どのような種類のレビュー範囲が必要となるかを判断できます。
調査員は、アラート システムとは別になっておらず、アラート システムに組み込まれたケース管理システムを使用する必要があります。そうしないと、これらのシステムが相互に通信せず、ファイルをエクスポートする必要があり、それに時間がかかるために、相互運用性の問題に直面することになります。アラート システムに既に統合されているケース管理システムを使用すると、特定されたアラートによって、そのアラートに固有のワークフローとコミュニケーションを開始できます。
「統合ケース管理」ツールを使用すると、時間の経過とともに増加するすべての細かいタスクをプラットフォーム内でオフロードして合理化することができます。「ケース管理システム」を使用すると、検知変数と説明変数や、ケースに関連するすべての理論的根拠と決定によって、すべての時間が節約できます。ケース関連情報の入力がすぐに開始でき、チーム全体で役割ベースでのアクセスと編集制御を行うことができます。アラートやケースに関連するすべてのコミュニケーションがそこで行われるため、SIU はケース進行にあたって人探しや書類探しで時間を無駄にしなくてすみます。「統合ケース管理」を使えば、コラボレーション、可視性、文書化がすぐにできます。
高度なツールに予算を投じても、リソースに費やされる無駄な時間が大幅に節約されることから、長期的にはコストの節約になります。SIU チームが、別のアドオンを購入したり、他の既製ソリューションを探したりする必要がなくなります。SIU はほんのわずかな時間で検出、エスカレーション、調査を行うことができるため、医療保険に対する投資収益率が確実に上がります。適切な「ケース管理」ツールを使用すると、アラート検知アルゴリズムとエンティティ解決が完全に統合され、あらゆる手段が講じられるため、調査員は、調査前に行っている手順の多くを省略できます。少なくとも、ケース管理により、特定のタスクや、一部の契約の作成に費やす時間が短縮されるため、調査員の効率が向上し、アラート対応に使える時間が増えます。「統合ケース管理」を使えば、調査員に提供されるアラートが実行性が高く、回収可能性が高くなります。
SIU チームの責任者は、最も多くのケースや手がかりを持っているのが誰であるかを確認したり、その在庫がどうなっているかを確認したり、複数の調査員のケースの価値を調査員ごとに比較して確認したりすることもできます。また、これによっては、遠隔医療よりもメンタルヘルスについて専門性が高いといった、ケースの専門性の高い分野について正当化することもできます。マネージャーは、ワークロードの振り分けをより適切に行い、ワークロードをより深く理解し、部下のパフォーマンスや、特定の作業に要する時間についてより深く理解できるようになります。
これまで行っていたケース管理における手作業のプロセスが、高度な AI によって完全に自動化され、これにより調査時間が大幅に節約され、精度や、部門全体のコラボレーションが高まり、詐取、無駄、悪用の防止予算を大幅に節約できます。すべてのデータ分析は UI に直接取り込まれ、調査員はすべてのアクティビティをリアルタイムで確認できるため、新たに文書やスプレッドシートを作成する必要がなくなります。時間とリソースの無駄をなくし、価値実現までの時間を短縮することは、SIU チームと医療保険にとって非常に重要です。「統合ケース管理」と高度な AI により、初日から同レベルの即戦力となることができるのです。